2014年3月号 <キーパーソン>

畑中 伸介 氏

キーパーソン

CS向上とコスト最適化を実現した
「グッドマン理論」国内事例の効用

ラーニングイット 取締役副社長
畑中 伸介 氏

2013年11月に発刊された「グッドマンの法則に見る 苦情をCSに変える『戦略的カスタマーサービス』」。苦情対応やクチコミに関する戦略やその経営効果を実践に基づいて示している。著者のグッドマン氏からコンサルティングを受けた経験を持つ翻訳者の畑中伸介氏に実践における効果を聞いた。

Profile

畑中 伸介 氏(Hatanaka Nobusuke)

ラーニングイット 取締役副社長

1985年Idea Link Japan, Inc.を設立(ロサンゼルス)。滞米16年を経て帰国後1998年にプロシードのCOPC事業部を設立、コンタクトセンターのパフォーマンス標準の普及に尽力した。現在、アッチェ代表取締役およびラーニングイット取締役副社長。

──グッドマン氏の理論を日本国内に普及させたいと考えたのはなぜですか。

畑中 経営層は、コンタクトセンターをはじめとしたサービス部門へはコスト削減を優先しがちです。しかし、中長期でのCS戦略や新規のビジネス展開を考えるなら、投資も必要で現場のマネジメントは経営陣を納得させるための材料が必要です。ところが、コンタクトセンターのマネジメントが活用できるような、経営陣との交渉材料の選定や効果の検証方法が書かれた著書はあまりありません。効率性の可視化は比較的容易にできますが、CS全体の価値を経営層に理解してもらうことは難易度が高いのです。

 本書で、グッドマン氏は「すべての投資対効果は金額で算出できる」という前提のもとに、さまざまなフレームワークを提示しています。私自身も、在籍してきた日本アムウェイや現在社長を務めるアッチェで導入し、その有効性を実証してきました。コンタクトセンターで、投資対効果の可視化に悩む方々にこの手法を知ってもらいたいと思っています。

──フレームワークを、実際にどのように活用しましたか。

畑中 アッチェでは、カスタマーサービス部門が社長直轄であるため、組織横断的なチームを新設するところからはじめました。ここでは、VOC分析から得られた知見を活かして業務プロセス全体の最適化を図りました。

 顧客からの意見は製品の改善に有効ですが、プロセス自体の改善に活用できれば、声をあげない顧客の不満解消にもつながります。後者は成果に結びつくまでに半年から3年ほどかかるケースもありますが、部分最適化よりも全体最適化の効果は絶大です。

 一方、日本アムウェイでは、顧客接点の一連のプロセス評価から取り組みました。これにより、俯瞰して良し悪しの判断ができるようになり、カスタマーサービスの実践手法から経営効果に至るまで、全体像を求める経営層の要求にも応えることができました。

──具体的にはどのような効果がありましたか。

畑中 施策個々の投資効果の検証、戦略ターゲットの選定などに有効でした。一例ですが、Webの最適化や説明書の改善などにより、わずか半年で10%の問い合わせ件数を削減し、予算も削減できました。圧縮できた予算は別の改善に投資でき、品質向上および顧客満足度の向上に貢献しています。

 グッドマン氏のフレームワークは、顧客接点全体を対象に評価します。このため、担当者の視点も、「コールセンターとしてどうするか」から「顧客接点をどうするか」へと変わりました。(日本アムウェイでは)副社長管轄に「カスタマー・エクスペリエンス」という部門もでき、全社レベルで顧客接点を考える企業体質に変わっていきました。今後、メールやソーシャルメディアなどの手法が変わってもスムーズに対応できると思います。