2014年9月号 <キーパーソン>

キーパーソン

コミュニケーションの基本は「わかりやすさ」にある
“伝え方の法則”を伝授する教育機関が誕生

教育コミュニケーション協会
代表理事
木暮 太一 氏

経済学の入門書を出版するなど、「複雑な情報をわかりやすく説明すること」をテーマに活動してきた木暮太一氏。昨年、教育コミュニケーション協会を設立した。保険や教育をはじめ専門的な情報を説明する企業・団体で浸透しつつある「伝え方の法則」は、コールセンターでも十分に活用できそうだ。

Profile

木暮 太一 氏(Taichi Kogure)

教育コミュニケーション協会 代表理事

大学卒業後、民間大手企業3社を経て現職。学生時代から「難しいことを簡単に説明すること」に定評があり、大学時代に自作した経済学の解説本が学内で爆発的にヒット。23年間研究したノウハウを活かし、書籍執筆、コメンテーターを行っている。

──教育コミュニケーション協会を立ち上げた背景と協会の趣旨について教えてください。

木暮 学生時代に学んだ経済学と社会に出てから勤めた経験から、人材育成には“わかりにくいことをわかりやすく説明すること”が必要だと痛感していました。実際、学生の頃はマルクス経済学の解説本を自作し、大学の書店で販売し好評を博したこともあります。たとえば、保険などの金融商品などが代表格ですが、自社の商品やサービスを顧客に説明しても、まったく理解してもらえない。そうした壁を感じているビジネスパーソンは少なくありません。わかりやすく伝えるために必要なのは、頭のよさやセンスではありません。「伝え方の法則」があるのです。当協会ではこの法則を広め、“わかりやすく伝える人材”を増やすことを目的に活動しています。

──伝え方の法則とはどのようなものですか。

木暮 (1)言葉を咀嚼する、(2)順番を整える、(3)相手の興味に沿う(相手がピンとくるように話を組み立てる)、の3つです。まずは、専門用語や難しい言い回しを一般的で解釈が容易な言葉に置き換えることが重要です。そして、複雑に絡み合った情報を整理して最初に伝えるべき要点とそれを補う情報というように順序を整理します。最大のポイントは、“省く勇気”を持つことです。わかりやすく伝えようとすると、どうしても「あれもこれも」となってしまいがちですが、可能な限り本質だけに絞りましょう。また、相手が「理解したい」と思うよう「相手が知りたいことを話している」ということをまず伝える必要があります。

 肝心なことがもうひとつあります。それは、「相手の課題を解消すること・相手の願望を実現すること」です。営業マンなどにありがちですが、自社製品やサービスのメリットだけを説明し続ける方が多い。でも、多くの場合、そのメリットが相手の課題解決につながっていないことになっています。協会の研修では、このやり方も具体的に教えています。

──協会の具体的な活動について教えてください。

木暮 講座は入門、2級、1級の3段階で、入門では「わかりやすさとは何か?」やどう練習すべきかを説明します。2級は、複雑なことをわかりやすく説明するワークや、相手に興味を持ってもらえる説明をするトレーニングを繰り返します。これを受講することで、「長くて分かりにくい話し方をする」と評価されていた人が1分で要点をかいつまんで話せ、かつ興味を持ってもらえるようになった例もあります。1級は、主に専門分野で活躍する方を対象にしており、専門知識を噛み砕き、お客様にわかりやすく説明できるようになることを学びます。これまで、役所や保険、化学、教育など専門的な企業、団体の方々が600名ほど受講しています。1級を受講し、資格認定を受けると2級の指導が可能になります。将来的には、こうした認定トレーナーを1000人、育成することを目指します。