2012年7月号 <今月のキーワード>

今月のキーワード

今月のキーワード

カスタマーエクスペリエンス


 見た、知った、聞いた、買った、使った、奨めた――消費者がひとつの製品やサービスの購買・利用、そして継続に至るプロセスを“経験”と捉え、価値向上を図る。「カスタマーエクスペリエンス」は、CRMを進化・発展させるキーワードとして認知度が向上しつつある。

 一般的には、顧客に対する訴求という観点からは以下の5つに分類される。(1)知覚経験価値(Sense):視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触感の五感を通して の訴求。ショールームやホームページ、そこでの音響効果など。(2)感覚経験価値(Feel):顧客の感情に対する訴求。丁寧な話し方、接客など。(3) 創造経験価値(Think):顧客の知性や好奇心に対する訴求。商品/サービスのコンセプトや企業の理念など伝えること。(4)行動経験価値(Act): 行動、身体、ライフスタイルに対する訴求。(5)準拠集団(Relate):集団、グループへの帰属意識への訴求。ユーザーグループ、ボランティア活動へ の参加など。

 この考え方に基づくならば、顧客はWebサイトを見ているだけで経験を得ているということになる。もちろんコールセンターに問い合わせする行為も同様だ。 そうした行動を通じて“事前期待”が形成され、実際に購買・活用した結果とのギャップが顧客満足/不満足となる。また、実際に利用した印象が顧客接点の対 応でプラスにもマイナスにも“修正”される可能性も高い。

 満足した顧客は継続利用、あるいは友人・知人へ推奨してくれる「プロモーター」となり得る。ソーシャルメディアの普及と拡大ですべての消費者が情報発信で きるようになった現在、「たった1回の感動経験」を広めてくれるケースも数多い。言い換えれば、プロモーターの潜在数と波及効果は従来のいわゆる“上得意 顧客”とは比較にならないほど拡大しているということだ。

 TwitterやFacebookのタイムラインをつぶさに検証すると、かつての「これ、よかったら使ってみて」という類のクチコミだけでなく、「接客」 に関するクチコミが多い。もちろん、ポジティブなものだけではなく、ネガティブなものを含めての話だ。つまり、顧客に感動経験をもたらし、プロモーターと なってもらうには製品の品質だけでなく、すべての顧客接点の対応品質を見直す必要があるということだ。店舗の店員、ホームページのユーザビリティ、DMや 広告のデザインやコピー、コンタクトセンターの対応――とはいえ、事前期待とマイナスのギャップが生じるような“煽り”は禁物だ。その“経験”はあっとい う間に拡散し、一度ついたイメージを払しょくするにはさらに膨大な時間とコストを要することになる。

 プロモーターの創出を目的とするならば、カスタマーエクスペリエンスに取り組んだ成果検証として最も適している指標は、ネットプロモーター・スコアだ。 「この商品(サービス)を友人・知人・家族にすすめますか」という質問を11段階で評価してもらうもので、9、10をつけた顧客をプロモーターと定義す る。実にシンプルだが、CS調査よりもロイヤルティ測定には適しているという見方が強い。