2014年12月号 <リーダー・オブ・ザ・イヤー 2014>

河田 裕司 氏

リーダー・オブ・ザ・イヤー 2014

次々に打ち出す“挑戦”を支える信念
「失敗はマイナスではなく、ゼロに過ぎない」

SBI証券
コールセンター 部長
河田 裕司 氏

Profile

河田 裕司 氏(かわた・ゆうじ)

1999年イー・トレード証券(現SBI証券)入社。インターネット取引サービス立ち上げに従事後、2002年コールセンターに配属。新人育成、スーパーバイザー、SBIダイレクト長(投資相談できるコールセンター)などを経て現職に至る。現在は、品質管理責任者として、顧客満足度の向上を目指し、電話応対品質及び生産性向上を目的としたさまざまな活動を継続的に行なっている

 SBI証券は、2011年から実に4年連続でコンタクトセンター・アワードの最優秀部門賞を受賞している。河田裕司部長は、その2011年の最優秀ピープル部門賞「マインドを覚醒させる!〜三つ星を実現させた『ありがとうコール』のすべて〜」の取り組みを主導。今もなお最重要KPIである「ありがとう率」を導入し、同社センターを“量から質”に転換させた。ありがとう率は、同社の事例報告と受賞をきっかけとして取り組む企業が増え、業界全体に大きな影響を与えたといえる。

 「新しい取り組みは、失敗しても“0(ゼロ)”に過ぎずマイナスではない」という強い信念を持って仕事に取り組んでいる。社内外に取り組み内容や成果を発信し、コールセンターの存在価値向上を実現している。

 「地道な取り組みが会社全体に波及し、他部署の理解者も増えたことで顧客対応の“できる範囲”が広がりました」(河田氏)

後進育成の肝心カナメは
「自分で考えさせる」プロセス

 河田氏は、リーダーとして後進の人材育成にも全力を注いでいる。役職や年齢に関係なく意見を求め、まとめあげていく。同時に「自分で考えさせる」というプロセスも忘れない。言動をはじめとした方向性がブレないので、スタッフの信頼も厚いようだ。

 さらに、コンタクトセンター・アワードの審査会では常に現場スタッフに発表役を務めさせ、自身はバックアップにまわるなど、経験も積ませている。

 また、ありがとう率の導入と定着は、モチベーション向上をもたらし、コールセンターの離職率は大幅に改善された。人材の安定化によって生産性向上への施策もスムーズに進み、平均対応時間短縮と1日あたり処理件数の向上も実現している。

 河田氏は、さまざまなセンター改革に取り組んだきっかけについて、「外部調査機関による低い評価でした。外部評価はつまりお客様の評価。社内評価による自己満足から脱することがセンターの価値向上につながると思いました」と振り返る。

 こうした外部の声(評価)を素直に受けいれる柔軟性のある思考と、新しいことにチャレンジする前向きな意欲が同社センターを前に進めるエンジンとなっていることは想像に難くない。氏が主導する次の施策がどんな成果をもたらすか──まさに業界注目のリーダーといえる。