2015年4月号 <リーダー・オブ・ザ・イヤー 2014>

寺下 薫 氏

リーダー・オブ・ザ・イヤー 2014

会社全体を巻き込んだCS改革
「センター体験研修」を主導

ヤフー
CS本部 人財開発部 トレーニングマネージャー
寺下 薫 氏

Profile

寺下 薫 氏(てらした・かおる)

ヤフー入社後、Yahoo! JAPANのサポートセンターである北九州センターやレスキュー コールセンターの立ち上げなどに従事。その後、人財開発部でSVや管理職の人材育成に携わり、これまでに累計700名以上のSVやトレーナーを育成。研究テーマは「魔法にかかったようにやる気と能力が引き出され、行動を起こさせる研修」。ソフトバンクユニバーシティ認定講師。

 「真のお客様第一を全社的に実現するためにコンタクトセンターができること」──センター管理者にとっては極めて大きな命題だ。とくにIT企業においてサービスを開発しているのはエンジニアなどの技術者。一般的には“顧客視点”や“ホスピタリティ”と縁遠い印象が強い。

 ヤフー CS本部の寺下 薫さんは、「技術者も企画も執行役員も、一度顧客対応を体験してもらえばCS(顧客満足)を考え、実践するきっかけになるのでは」という発想のもと企画を立案。経営層に承認を得て、地方センター(北九州や高知)で顧客対応を体験する研修を実施している。

 「ヤフオクをはじめとしたサービスやツールの改修が顧客視点で実践されるようになったうえに、社内でクチコミが広がって顧客対応体験研修の依頼が増えてきました。また、経営の判断で新入社員研修としても採用されています」(寺下さん)というように、その成果も認められている。

自社だけでなく他社の人材も育てる
「SV研究会」を主宰

 寺下さんのモットーは「率先垂範」。メンバーには常に「自らチャレンジする」という姿勢を示すことを心がけている。顧客対応体験研修はその代表的なものだが、ここ1〜2年、講師として取り組んでいる「SV研究会」も同様だ。

 自らの経験から、「コンタクトセンター運営を左右する存在はSV」という信念を持つ寺下さんは、自社だけでなく業界の将来のためにも優秀なSVを育てなければならない」という使命感に基づいて同研究会を発足した。

 対象に外部企業も含むこの研究会は、すでに5期(2015年2月現在)を数え、受講者数は39社86名にも達している。

 何のために他社のSVまで育てようとしているのか。しかも、受講料は無料である。それは、「コンタクトセンター業界全体の底上げに貢献することが、ヤフーのブランド価値を上げ、最終的には経営貢献につながる」(寺下さん)という考えがあるからだ。ヤフーがいかにCSを重視しているかという宣伝になっているのは事実で、SV研究会はコンタクトセンター業界内でクチコミで認知度が向上、申し込みが殺到している。

 リーダー・オブ・ザ・イヤーは、社内でのリーダーシップが審査対象だが、寺下さんの挑戦は業界全体をリードする試みとして審査員全員が高く評価した。