2015年9月号 <キーパーソン>

グンター・ミュラー 氏

キーパーソン

通話録音、品質管理、音声分析──
クラウドソリューション軸に販売強化

独ASCテクノロジーズ 会長
グンター・ミュラー 氏

ドイツのソフトウエアメーカー、ASCテクノロジーズの主力製品である通話録音の特徴はグローバル基準に準拠しており、仮想化やクラウド、マルチメソッドなどの機能を差別化ポイントとする。このほど来日したグンター・ミュラー会長に世界での実績と日本市場への展開について聞いた。

Profile

グンター・ミュラー 氏(Gunther Muller)

独ASCテクノロジーズ 会長

ドイツASC社オーナーとして、33年間にわたりグループ企業の成長に尽力。2012年より現職である会長に就任し、アドバイザリーボードの責任者として経営に携わる。

──まず、ASCの事業概要をご説明下さい。

ミュラー ASCという社名は、オーディオ・システム・コンポーネンツに由来しています。今年に入って「ASCテクノロジーズ」と社名を改め、ソフトウエア開発を中心に「コミュニケーションを録音して分析する事業」と表するようにしました。注力しているマーケットはWFO(ワークフォース・オプティマイゼーション)で、売上構成は大きい順から通話録音、QM、スピーチアナリティクスです。特徴はすべての製品をクラウドで提供できるように開発していることで、クラウドの将来性や市場の拡大を確信しています。今回の来日で、ビジネスパートナーとも話をしましたが、日本でもクラウドの潮流が来ており、この信念を改めて強くしたところです。

──クラウドの現状をどう見ていますか。

ミュラー クラウドは欧州ではブームを迎えています。とくにテレフォニーに関しては少数のベンダーによる寡占化が進んでおり、毎年30〜50%ペースで伸びています。ブームを迎えている理由は、企業が直面する価格競争へのプレッシャーです。たとえば上場企業は、IT業務をSIerなどにアウトソーシングしていることが多いですが、その際にコスト削減のためにクラウドサービスを活用することが一般的になっています。

──クラウドサービスを提供している会社とパートナーシップを結んで展開しているのですか。

ミュラー 当社ではドイツにデータセンターを保有しているうえ、英国でも来四半期にデータセンターが稼働します。このように自分たちでもクラウドサービスを提供していますし、SIerをはじめ、スペインの大手通信事業者のテレフォニカとも協業して提供するケースもあります。

──各国の市場性の違いと日本への展開をどう考えていますか。

ミュラー 日本と欧州は似ていると思います。米国のコンタクトセンターはすでにWFOを入れているところが多く、しかも日欧よりも大がかりなシステム構成になりがちです。日本では本格的に進出した7〜8年前から“正しいビジネスパートナー”を見つけることが大切だと考えて、一歩一歩、協業関係を築いてきました。今後もこの方針は変わらず、重要市場に位置付けて展開を強化して行きます。ただ、当社の方針として直接エンドユーザーにアプローチする計画はありません。

──現在の世界の地域別のシェアと今後の目標について最後にお聞かせ下さい。

ミュラー 当然ですが本国ドイツの売り上げが最も大きいですが、地域別では欧州が全体の70%、米国が15%、アジアも15%となっています。アジアでは日本が最大のマーケットであり、日本のお客様の声には積極的に耳を傾けていきます。ASCとしては世界市場で今後5年間は、毎年10%の伸びを達成するとともに、2020年までに売上の40%をクラウドベースの製品にする目標を掲げています。