2016年5月号 <リーダー・オブ・ザ・イヤー 2015>

吉田 澄代 氏

リーダー・オブ・ザ・イヤー 2015

顧客の声、社員の声、クライアントの声
「きく力」で“エンゲージセンター”を率いる

グランドビジョン
執行役員
エンゲージセンターマネージャー
吉田 澄代 氏

Profile

吉田 澄代 氏(よしだ・すみよ)

アパレルメーカー時代は、持ち前の明るさや発想力で売上記録を樹立し異例の早さで店長へ昇格。結婚、出産を経て、大手食品メーカーへ転職。パート勤務から総合職のマネージャーへ昇進。教育・研修講師などを経て、グランドビジョンへ移籍。「日本一女性が働きやすいエンゲージセンター」を目指す。

 アウトソーサーのコールセンターは、クライアントの社員(経営者)に代わって顧客と向き合うことをビジネスとしている。にも関わらず、現場にはさして大きな権限が与えられているわけではない。

 福岡市に本社を構えるグランドビジョンは、事業プロデュースを主体としながらクライアント向けサービスの一環としてコールセンターも運営している。TVCMなど媒体を活用したプロモーションと、その受け皿となるコールセンターをワンストップで受託できる点が大きな特徴だ。執行役員の吉田澄代さんは、コールセンターを「エンゲージセンター」と名付け、70名弱のスタッフをけん引している。

 「“コール=呼ぶ”ではなく、“お客様とつながっていく”という考え方を前面に出して運営していきたい」(吉田さん)という意思の表れがこの名称といえる。

委託元とその顧客の利益を両立
VOC活動を企業文化にまで昇華

 重視しているのは、「コミュニケータが自由に意見を言うことができるセンター作り」だ。

 吉田さんは、「コールセンターは、“言われたことだけをやる”という印象が強すぎると感じています。そうではなく、企業(クライアント)のストーリーを語り、お客様のニーズを探る、“クライアント様×お客様をエンゲージメントしていく部署”に成長することを課員全員と面談し、説明しつづけています」と言う。ポリシーに基づいた行動を実践しているというわけだ。

 常にメンバーと会話し、趣味ややりたいこと、職場に対する満足感を念頭に入れて社内イベントも先頭に立って実施している。結果、ここ数年の離職率は0〜1%と極めて低い。人材獲得競争が激しく、流動化も発生している福岡市において、この数値は驚異的といってもよい。まさに「働きやすいセンター」を具現化している。

 センター全体で最重要視している活動は、VOC(ボイス・オブ・カスタマー)だ。あるクライアントの業務で、徹底的にVOCを聞くということからスタートしたところ、全体の25%をクレームが占めるという事実が判明。そこでヒアリングをさらに徹底し、クライアントに改善提案を続けたところ、1年ほどでクレーム率は半減したという。

 同社の新入社員は、まず1年程度、エンゲージセンターでVOCを聞きながら社内提案をし続けることがミッションとなる。VOC活動は同社の企業文化の中核で、吉田さんはその「先導役」として欠かせないリーダーといえそうだ。