2012年10月号<キーワード>

今月のキーワード

今月のキーワード

コンシェルジュ対応

 通話時間を気にせずに解決するまで顧客に対応する。ときには、お礼の品や感謝状を送るなど、コストと手間をかけて“おもてなし”する。いわゆる「コンシェルジュ対応」である。

 そもそもコンシェルジュの職業的意味とは、高級ホテルで劇場のチケットやタクシーの手配など、宿泊客に対してあらゆるサービスを提供するスタッフを指す。「顧客の要望を何でもワンストップで対応できる人」という意味合いが強いため、同じ顧客接点であるコールセンターも目指すべきという発想が生じている。

 しかし、コールセンターは労働集約型の職場であることから、「生産性向上」「効率化」が切っても切り離せないミッションとして存在する。その一方で対応品質の向上も要求される。「生産性と品質をより高次元のレベルで平準化した対応」が是とされ、しかもそれを派遣社員やアルバイト、パートタイマーといった非正規雇用者や外部への業務委託で実現しなければならない。その結果、“マニュアル”が現場の拠り所として存在し、信奉されている傾向が強い。

 コンシェルジュ対応を目指すセンターが口を揃えるのが“脱・マニュアル”だ。「顧客それぞれのニーズや置かれている状況、趣向に合わせた対応」を図っている。

 実践のカギを握る要素は、「現場への権限委譲」「人材教育」だ。マニュアルの範囲の超えて対応する判断を、対応者であるオペレータに委ねることができるのか。また、実行に移す判断力など必要なスキルをどう育成するのか。トーンとマナーに終始した教育研修を「簡単なお仕事です」というキャッチコピーで集めた人材に施しただけでは絶対に不可能だ。具体的例を挙げれば、米ザッポスのように正社員対応を、「コア・バリュー」という共通の価値観を教えながら実践できるのか――挑戦している企業もあるが、難易度は極めて高く、いずれも途上にある。

 さらに成果検証も課題として立ちふさがる。実践がどこまで収益に寄与したのかを測定するのは難しい。ひとつの手段として、対応した顧客に対するNPS(ネットプロモーター・スコア)が考えられる。「この商品やサービスを家族や友人に推奨しますか」という質問に0~10の11段階で回答してもらい、「9~10点」の比率から「0~6点」の比率を引いたスコアで、「推奨度」という満足度より高いロイヤルティを測定することができる手法だ。これを中長期的に計測することで、コンシェルジュ対応がもたらしたロイヤルティ醸成への貢献度を測る。この取り組みは、すでに一部の企業で実践されている。