2012年9月号<今月のキーワード>

今月のキーワード

今月のキーワード

ソーシャル・リスニング

 顧客の声を経営資源と捉え、商品/サービス開発や業務改善に役立てるVOC(Voice of Customer)活動。実践企業では、コールセンターの電話/Eメール対応データやユーザーアンケート、モニタ制度などによって集められたVOCを共有する仕組みや制度が整備されている。
昨年来、収集チャネルとして注目度を高めているのがTwitterやFacebookをはじめとしたソーシャルメディアだ。自社ユーザー、それも「わざわざ問い合わせや苦情を寄せてくれる顧客」からの声に偏っていた従来のチャネルと決定的に異なるのは、競合他社のユーザーや不満を持ちつつ使ってくれている顧客や何も言わずに離反してしまった顧客など、幅広い層のVOCが収集できる点にある。その活動を、「ソーシャルリスニング」あるいは「ソーシャルVOC」と呼ぶことが多い。
ITベンダー各社は、テキストマイニング技術を中核にした分析ツールを相次いでリリースしており、それもクラウドサービスとして安価に利用できるソリューションが中心であることから利用企業が急増している模様だ。
いいことづくめのソーシャルリスニングに見えるが、実際には弱点――クリアすべき課題もある。
現在、収集チャネルとして最も高い価値を見出されているのがTwitterだ。発信される情報のボリューム(件数)だけなら他のソーシャルメディアを圧倒しており、検索性/アーカイブ性も高い。ところが、実際に自社サービスや商品について検索してみると、投稿手順の手軽さゆえに「いい/悪い」「おもしろい/つまらない」など、単語の羅列に終始しているケースが目立つ。つまり、“理由”がわからないため、分析しても「ネガ/ポジ分析の域を出ない」という指摘があるのだ。専門家や先進事例のなかには「だからこそ、企業側から話しかけるアクティブサポートを実践し、その“なぜ”を聞くことが大事」と指摘する向きが強い。
そもそも、コールセンターで収集するVOCに高い価値を認められたのも、オペレータとの対話によって、より掘り下げた意見を聞くことができるためだ。Twitterに限らず、ソーシャルメディアにおけるVOC活動も、「コミュニケーション」が成否のカギを握っていることは間違いないといえる。
なお、2ちゃんねるに代表される従来型のフォーラムは、「あまりにも玉石混合すぎるうえに“石”の比率が高すぎる」という指摘がある。VOCとしての価値は割り引いて考えた方がよさそうだ。