2013年1月号 <今月のキーワード>

今月のキーワード

今月のキーワード

マニュアル対応

 コールセンターの現場で働くスタッフの“心の拠り所”とは何か。多くの場合、それはセンター長でも、その会社の経営者でもない。対応の手順を記した「業務マニュアル」である。

 インバウンドでもアウトバウンドでも、テクニカルサポートでも受注でも、マニュアルである以上は「対応すべき要素」がほぼ網羅されているはずだ。その通りに対応していれば、マネジメントから叱責されることはない。顧客に怒られることはあっても、最終的な責任はマニュアルを作ったマネジメントにある。直接顧客と対応するオペレータや指導するSVにとっては、暗闇でも行くべき場所を示す羅針盤のような存在だ。

 もともと、コールセンターにおけるコミュニケーション品質は、「ベテラン、新人を問わず誰が電話に出ても同じ対応」が“あるべき姿”とされている。モニタリングもコーチングもその観点で実施するセンターが大半だ。

 その結果、何が起きているのか。確かに平準化はされているが、顧客側からすれば「融通が利かない」「冷たい」「親身に対応してくれない」というネガティブな印象が残る傾向が強い。編集部が毎年実施している「コールセンター利用者調査」でも、業種を問わずマニュアル対応に対する不満は必ず挙がる。

 「おもてなし」「コンシェルジュ」の実現を目指し、脱・マニュアルを掲げるセンターもある。しかし、間違った対応を防止するためには、マニュアルは絶対に必要なツールだ。ホスピタリティの高さに定評があるディズニーランドでも、キャスト(場内で来場者をもてなすスタッフの総称)向けのマニュアル(手順書)は存在するという。

 コールセンターと同じように非正規社員が大半を占めるディズニーランドはホスピタリティが高く評価され、コールセンターはマニュアル対応が批判される。両者の違いは「“お客様のための判断や活動”を損なわないようにマニュアルを運用をしているか否か」にあると推察できる。ディズニーランドで教育を担当していたJSパートナーズの福島文二郎代表は「礼儀正しさまでマニュアル化してしまうと融通の利かない人材が育つ」と指摘する。コールセンターは、モニタリングによってマナーとトーンを徹底的にチェックする傾向が強い。おもてなしの実践レベルを見るには、「顧客を納得に導いたか」をチェックするモニタリングを学ぶべきだ。

 マニュアルは、現場の行動を縛るものであってはならない。CSを損なわない運用には、現場に対する“権限委譲”も大きなポイントとなりそうだ。