2013年2月号 <今月のキーワード>

今月のキーワード

今月のキーワード

応答率

 応答率とは、一般的に「PBXに着信したコールのうちオペレータに接続できたコールの比率」を指す。IVRの有無やコール統計管理システムの設定によって母数となる数値が異なるケースもあるが、概ね「応答できたコール」と考えてよい。国内コールセンターのマネジメント担当者の多くが「最も重視している」と挙げる、その意味ではまさにKPI(Key Performance Indicator)だ。

 しかし、「応答率をここまで重視しているのは世界中のコールセンターで日本だけ」と指摘する専門家や先進センターのマネージャーも数多く存在する。ワールドワイドにおいて「つながりやすさ」を示し、コールセンターの必要人員数算出の基盤となっているKPIはサービスレベルである。これは「X秒以内にY%のコールに応答する」と設定されるもので、その達成度合いこそが最大のKPIであるという考え方が欧米では定着している。

 なぜ、応答率ではなくサービスレベルなのか。それは、サービスレベルは「つながるまでのプロセス」を包含した指標であるのに対し、応答率はあくまで「つながった」という結果にすぎないからだ。具体的には、1コール鳴り終わらないうちにオペレータにつながろうが数十分待った挙句つながろうが、数字上では「応答した」という結果は同じこと、ということだ。まったく顧客視点を無視した集計値であって、少なくとも「顧客満足度向上」「顧客経験(カスタマー・エクスペリエンス)の充実」を掲げるセンターがKPIとすべき数値ではないといえる。

 サービスレベルを無視し、応答率だけをチェックした顧客対応では、電話に出たオペレータは、その顧客をどの程度の時間、待たせてしまったのかを把握することもできない。つまり、「大変お待たせいたしました」と言うべきなのか、いきなり名乗っていいものか、その判断すら不可能ということだ。場合によってはクレームを招くこともある対応といえる。

 仮にこの状況で接続品質に対する顧客満足度が高いとすれば、そのセンターは余剰人員が発生している可能性が高い。つまりはコストの無駄使いで、とくに業務委託においては厳重なチェックが必要といえる。

 ちなみに、応答率という指標は欧米には存在しない。欧米では応答できなかったコールの比率、つまり放棄呼率という呼び方となるので、例えばグローバルなコンファレンスなどでは応答率という指標自体が通用しないことも覚えておきたい。