2012年6月号<今月のキーワード>

今月のキーワード

今月のキーワード

ビジネスKPI

 コンタクトセンターのパフォーマンスやクオリティを測定するKPI(Key Performance Indicator)には、実にさまざまな種類がある。
 代表的なものは「X秒以内にY%のコールに応答する」というサービスレベルの目標達成率、放棄呼率、平均応答時間、平均通話時間、平均後処理時間、オペレータ稼働率などがそれにあたる。
もちろん、これらを常時チェックし、悪化した項目の原因を探り対処することはセンター・マネジメントの基礎中の基礎である。各KPIの相関関係を理解することは、センター長が真っ先に習得すべきマネジメント・スキルだ。
 しかし、「いくらパフォーマンスやクオリティをチェックしても、経営貢献度が測定できない」という見方も強い。収益や売り上げへの貢献度を示すことができないゆえに、コンタクトセンターの位置づけが向上しない。位置づけが向上しないので投資も認められないばかりか、コストカットだけを要求されているのが現状だ。
 コンタクトセンターの経営貢献度を測定する指標――それが「ビジネスKPI」である。
 経営への貢献要素は、コスト、顧客満足度、売り上げ――の3種類に分解できる。
 コストは、処理(対応)件数を高めて稼働率を上げる、あるいはセルフサービスでの解決率を向上することで削減できた運営費(主に人件費やアウトソーシング費)で示すことができるが、これは品質低下と紙一重の取り組みになりがちなので注意が必要だ。さらに言えば、この要素だけに注力することを求められている限り、「コールセンターにかけるお金は投資ではなくコスト」と経営陣に見なされている証明ともいえる。
 次に顧客満足度向上への貢献だ。まずは「顧客が何を求めているか」を知ることから始まるが、多くの場合は「つながりやすさ」と「問題解決」である。つながりやすさは前記したKPIのなかのサービスレベル達成率や放棄呼率、問題解決は一次対応完了率などがそれにあたる。問題は、この数値そのものは収益に反映しにくいということで、これをビジネスKPI化するには中長期的にロイヤルティを測定する指標(離反率や取引/利用継続率など)を合わせてチェックしなければならない。極めて難易度が高いといえそうだ。
 最後の売り上げ貢献は、会員ビジネスや通信販売など、測定しやすい業種も多い。会員に対するキャンペーン案内に伴う成果や通信販売におけるアップ/クロスセル率などが該当する。
 放棄呼率だけに一喜一憂していても経営貢献は認められず、人材やITに対する投資もリターンを期待できないコストとしか見てもらえない。再度、コンタクトセンターの貢献度を考え直し、経営層にアピールする取り組みが必要だ。