2013年4月号 <キーパーソン>

西村貴好氏

キーパーソン

ダメ出しでは磨かれない人間力
コールセンターでも役立つ「ほめ方」

日本ほめる達人協会 代表理事
西村貴好氏

コールセンターでは「改善点」の指導をしなくてはならないが、「オペレータに素直に受け入れてもらえない」と悩むSVは多い。ほめ方、伝え方のプロフェッショナルである「日本ほめる達人協会」の西村貴好理事に具体的なアドバイスを聞いた。

Profile

西村貴好氏(Nishimura Takayoshi)

日本ほめる達人協会 代表理事

2005年ほめる調査会社「C's」を創業。2010年日本ほめる達人協会を設立。全国で講演・セミナーを行う。NHK「クローズアップ現代」、「エチカの鏡」、「深イイ話」などに出演。著書「繁盛店のほめる仕組み」は現在6刷。

──“ほめる調査会社”を設立した理由を教えてください。

西村 一般的な覆面調査であるミステリーショッパーは、「できていないことのチェック」をベースとしています。おそらく、コールセンターで行われているミステリーコールも同じでしょう。しかし、家業のホテル業における経験上、これは継続性がない“もぐら叩き”に終始して人材が定着しないことがわかっていました。そこで逆の視点、「ほめること」を中心とした調査会社を設立し、報告書を作成したところ、収益においても劇的な効果が表れたのです。

──第3者にほめられると現状に満足してしまい、改善が進まないのではと危惧する声もあると思うのですが。

西村 コツは、「ほめたときは、次の目標と合わせて提示する」「ほめて認めたうえで、すぐに改善できる点のみを伝える」ということです。これで、自主的に改善しようというモチベーションが向上します。

 人間にとってダメ出しをしたり、けなすという行為は本能でできます。ところが、ほめるという行為は意思の力、考える力が必要なのです。思考する力は、指導する側の人間力も養成します。

──「ほめる達人協会」を設立した動機と経緯は。

西村 年間に3万人も自殺者が出る状況は異常です。政治経済などへの漠然とした不安も影響して、子どもだけでなく、大人の社会でもパワハラやいじめが横行しています。こうした状況では、個々人が自分の身を守るスキルを身につけなくてはなりません。それが、ほめることで身につく「相手や環境の良い点を見出し、新たな価値を提示する力」です。

 既に複数社へのコンサルティングを通してビジネスへの貢献も実証していました。そこで、この考え方と手法を拡大したいと思い、2011年に一般社団法人化して“ほめ達”検定をはじめたのです。

──オペレータの自主性教育に悩む指導者は多くいます。アドバイスをいただけますか。

西村 コールセンターは非正規社員が多いと聞きます。キャリアパスが提示できない状況では、モチベーション喚起や自主性の誘発に難しさを感じるケースもあると思います。

 私がよく使うのは、小さな頼み事をしたり、すぐに修正できて効果が高い改善事項を選んでアドバイスをする方法です。「自分が役に立てた」「こんなに効果が出た」という喜びや達成感は一度味わうとやみつきになります。この味覚を次々と体験してもらうことが自主性を育むのです。

 指導するときは、相手にめいっぱいの感謝の気持ちを伝えてほめた上で、「ここが惜しい」と伝えてみてください。指摘を受けた側には「自分が肯定されている」という気持ちが多く残るので、素直な気持ちで受け取りやすいのです。大切なのは、口先だけで言うのではなく、心からの「相手に良くなってほしい」という想いを伝えることです。徐々に、積極的に直していこうとしてくれると思いますよ。