2013年5月号 <第2特集>ミック経済研究所

第2特集

クラウド、ソーシャルもまだ未知数
“大型更改案件頼みの成長”に不安
ミック経済研究所 調査第一部 亀井敬房氏

 

 2012年度のコンタクトセンター向けIT市場は、大型のリプレース案件が重なったことで想定以上に伸長しました。

 ただ、これらはリーマンショック後に更改が見送られた企業において「延命措置が限界に達したから」という理由がほとんど。新しいサービスや機能拡張に伴う案件は少数だったと思われます。成長を支える要因がほぼリプレース頼みというのは、市場そのものが飽和していると見てよさそうです。伸び率はここ数年では高い方ですが、おそらく3%増程度だと見ています。

 話題を集めているクラウドソリューションですが、確かにベンダーもSIも「提案は絶対に求められる」と口を揃えます。しかし導入に至るケースは少ないようです。とくに、コールセンター市場で大きなウエイトを占める金融業界、中でも銀行業界では、情報セキュリティの側面から顧客データをクラウドに乗せるケースはまだまだ少ないようです。

 IT業界全体のトレンドからすればクラウド化は避けて通れないとはいえ、直接ユーザーの現場や情報システム部門と相対するSIにとっては、少なくとも四半期や1年単位で見れば、オンプレミスからの乗り換えでは売り上げも利益も下がってしまうビジネスです。おそらく、今後は1年単位などではなく、もっと中長期的な業績評価を採用するといったクラウドに特化した営業戦略が必要になると思います。

 同じく注目されているソーシャルメディア関連ソリューションは、まだ市場全体を押し上げるほどのインパクトには至っていません。BtoCの大手メーカーが本格導入しないと難しいのではないでしょうか。Facebookユーザーの増加率にも停滞傾向が見られるなど、慎重さが求められる要素も出てきました。おそらく、企業側は「自社の顧客がどのチャネルを必要としているのか」を見極めている段階だと思います。その中でも、短期的に見るとマーケティング部門などでの投稿分析ツールのニーズはあると思われます。

 

 

ミック経済研究所発刊「CRM実現のためのITソリューションマーケットの現状と展望 2013年度版」については下記リンク先参照。
http://www.mic-r.co.jp/mr/00670/