2013年5月号 <第2特集>アイ・ティ・アール

第2特集

クラウド市場拡大を牽引するPaaS
高いカスタマイズ性がニーズに合致
アイ・ティ・アール シニア・アナリスト 藤巻信之氏

 

 CRM全般に関しては、アプリケーションの土台となるプラットフォームをクラウド上で提供するPaaS(Platform as a Service)系のニーズが非常に高まっています。セールスフォース・ドットコムが提供する「force.com」はクラウド上で開発から運用まですべてを行うことができるもので、基幹系を除いて、多くの業種や業界で導入が加速しています。既存のシステムに業務フローを合わせなくてはならないSaaS型のクラウドよりも、カスタマイズ性の高いPaaS型は日本のビジネス形態に合っているのだと思います。

 チャネル別で目立つのはメールサービス市場で、2012年の市場規模は84億円となり安定的な伸びを示しています。主な要因は、発信系サービス分野で、企業や公共機関はもちろん、学校でもメールのアカウントを発行するようになって規模が拡大し、用途も多角化してきていることが挙げられます。今後、スマホ普及に合わせてマーケット全体が拡大するでしょう。しかし、問い合わせメールを処理する「受信」分野は9億円弱の市場規模にとどまり、伸び悩んでいます。

 注目を集めている解析・分析系のソーシャルメディア市場規模は、2010年度10億円、2011年度14億円でしたが、2012年度は20億円と急成長をしている分野です。今後年間20%程度の伸び率を維持する見込みで、2016年度には40億円に拡大すると予測しています。今後はアクティブサポートをはじめとした管理/運用系のサービスも増えてくるでしょう。こちらは、ニーズ拡大につながるような活路があまり見出せていない状況ではありますが、安価な価格や手軽さなどから徐々に市場は伸びてくるでしょう。課題はありますが、電話、メールに加えてソーシャルも1つのメディアとなり、多角的で信ぴょう性の高い情報や円滑なコミュニケーションを求めて融合していく可能性もあります。

 

 

同社の調査レポート「ITR Market View:マーケティング管理市場2013」については下記リンク先参照。
http://www.itr.co.jp/research_service/market_view/marketing2013/