2013年5月号 <第2特集>ガートナー ジャパン

第2特集

CRM市場、拡大の条件は
“部門間のカベ”を取り払う提案力
ガートナー ジャパン リサーチ部門 顧客関係管理(CRM)アプリケーション 主席アナリスト 川辺謙介氏

 

 あらゆるソリューションにおいて、「オンプレミスかクラウドか」を検討する傾向が強まっています。コールセンターでもITベンダーやSIに提案を要求する企業が増えているようです。

 両者は、例えるならオンプレミスは自宅の庭に井戸を掘ることで、クラウドは水道局から水をひくようなもの。日本企業は、情報セキュリティやレスポンシビリティといったSLAを追求する傾向が強く、クラウドやパッケージを検討しても、結果的に自前主義を貫く傾向があります。それでも、中長期的にはグローバル展開を志向する企業が増えることも想定されるため、徐々にクラウドに切り替わると予想しています。現段階で比較的、コールセンターでの導入が進んでいるのは顧客データベースなどのクリティカルな情報を扱わないような業務や、導入価格のメリットが大きい中小企業のようですが、将来的にはインフラを含めてより広い領域でクラウド化する可能性が高いと思います。

 直近の期待分野として挙げられるのがソーシャルメディア活用を対象としたマーケットです。CRM全体を見れば、グローバルにおいてもまだ10%にも満たない構成比だとは思いますが、ここ数年は毎年倍増しています。市場全体を拡大するトリガーとなり得る分野といえそうです。

 ソーシャルを含めた市場拡大には、ベンダーやSIが従来の情報システム部門を対象とした営業や提案から脱却することが必要です。近年、マーケティング部やネット販売を行うWeb事業部などビジネス部門の人たちのITに対する注目度が高まっています。しかし、大企業に見られる横のつながりがない「サイロ化」した状態で、有効な提案をするのは難しい。これを打破するために、すでに一部の大手ベンダーは企業全体を対象に営業展開しています。情シス、コールセンター、マーケティングなどの部門間融合を進めるソリューション提案が市場拡大の条件といえそうです。