2012年12月号 <今月のキーワード>

今月のキーワード

今月のキーワード

おもてなし

 「おもてなし」という言葉をコンタクトセンターの顧客対応において耳にすることが多くなってきた。しかし、そもそもおもてなしとは何なのだろうか。

 その語源は、国語辞典によると「持て成し」であり、待遇や客に出すご馳走を意味するようだ。旅館などでおもてなしを掲げて接客する“持て成し”が実践されているのは既知の通りだが、近年ではあらゆるサービスシーンにおいておもてなしの重要性が説かれるようになっている。しかし、実はおもてなしという言葉そのものは辞書には載っていない。結果、あらゆる解釈があり、その実践の仕方はさまざまだ。

 おもてなしを「ホスピタリティ」と考える例もあるようだが、少し異なったものではないだろうか。ホスピタリティを英語で調べると、確かに持て成しの意味には概ね合致しており、ホスピタリティと持て成しは同義のように思える。しかし、“おもてなし”という表現に含む日本文化の体現は、ホスピタリティには感じない。実際に「ホスピタリティ産業」は存在するが、「おもてなし産業」というものは存在しない。

 持て成しに美化語の「お」をつけた言葉が「おもてなし」だ。考えてみると不思議な言葉だが、日本人であれば感覚的に理解できる部分が大きい。それゆえに、おもてなしの実現はやりがいのあるものと言える。

 これからのコンタクトセンターではまさに“おもてなしの心”が必要不可欠である。おもてなしとは、実は私たち日本人が他人とのコミュニケーションにおいて当たり前に実践してきたことで、「相手の状況や心情を察し、考え、行動すること」なのだ。つまり「相手主義」のコミュニケーションということだ。コンタクトセンターの現場では「傾聴」や「共感」などのキーワードが存在し、日々それらを実践するための教育に腐心しているが、まさにそれこそが「おもてなし」ではないだろうか。実は、多くのコンタクトセンターの現場では、すでに日々「おもてなし」が実践されているのである。

 これまでの画一的な顧客対応から、 一人ひとりの顧客に対してより良い顧客対応をする。コンタクトセンターにおけるおもてなしの実践は、オペレータが持っているコミュニケーションスキルを最大限活かすことのできる企業全体の体制や仕組みを整えたうえで初めて実現可能となる。基本教育、センター運営構築を着実に実施し、その上でオペレータが「おもてなしスキル」を発揮できる環境を整えることが重要である。

(コンタクトセンターおもてなしコンソーシアム:大西美佳)