2022年11月号 <わたちゃんのかすたま〜えくすぺりえんす>

わたちゃん

<著者プロフィール>
職業:顧客経験価値にこだわる戦略立案&業務改革コンサルタント
過去勤めたことのある企業:日本ユニシス、日本IBM、日本テレネット
週末の過ごし方:
<ケース1>隅田川あたりをぶらぶら散歩して浅草で飲んだくれたあと銭湯で汗を流す
<ケース2>スポーツジムでヨガレッスンを受けて汗を流す
最近の悩み:昔は痩せの大食いだったのが、最近は小食の小太りになっていること

サブスクリプションは
カスタマーサクセスのひとつの手段

ISラボ 代表 渡部弘毅

 1年ほど前、車を買い替えるタイミングでトヨタのサブスクリプションサービス「KINTO」を契約した、わたちゃんです。ディーラーの営業マンは、営業成績を気にしてか、買い取りを勧めたかったようですが、「天下のトヨタが鳴り物入りで始めて顧客も興味を示しているサブスクリプションサービスを、なんで勧めないんだ!」と言うと、それ以上のゴリ押しはありませんでした。

 近年、顧客と企業の新しいWin & Winモデルとして、「サブスクリプション・モデル」のサービスが広がりつつあります。サブスクリプションとは、製品やサービスの購入ではなく、利用に対して代金を支払う方式で、料金は定額制や利用期間・利用度合いに応じた従量課金制などがあります。クラウドサービスの登場でソフトウエア分野に広く適用されたことから、小売りやサービス業にまで拡大。生活者のベネフィットが高まる一方で、企業の戦略やマーケティングのあり方を大きく変革する必要性が出てきました。

 本モデルは、利便性や価格面での訴求価値だけで終わらせないことが重要です。たとえば、比較的単価が高めの洋服のサブスクリプションを例にとってみましょう。

 従来は、「慎重に洋服を選んで大金を支払って長く着用する、飽きた時やコーディネートの幅を増やすためにはまた新品を購入する」といったパターンでしたが、サブスクリプションサービスを利用すれば、定額で毎月、新しい服が届いて着用でき、気に入れば購入も可能で、購入するまでもない商品は翌月には返却してまた新しい洋服を着る楽しみが繰り返されるといったサービスで、利便性が増します。価格面では、毎月の支払いは発生するものの、従来、発生していた追加購入などを考慮すると結果的にはお得に、しかも満足度高く洋服を着ることができます。

 しかし、その先の本当の価値は、「顧客とつながり続けること」によって生まれます。企業は顧客が毎月、着用している洋服や好みなどのデータを蓄積できます。そうした情報をもとに、新たなサービスが展開できるのです。顧客にとって洋服は買うことが目的ではなく、買った商品で豊かなファッションライフを実現することであり、これがカスタマーサクセスなのです。しかしながら企業は売ることが目的になりがちです。これをサブスクリプション・モデルにすることで、顧客のファッションライフを支援するカスタマーサクセス業へと転換することが可能になります。

 というわけで、KINTOがトータル的に安いかどうかはわかりませんが、車の所有やメンテナンスに対する意識が低くても、安心・安全を確保するカーライフを実現するという僕のカスタマーサクセスを実現してくれる、最適な手段と感じています。現場の営業マンの意識と評価制度を変革して、さらにプロアクティブなサービスの提案があれば、もっと普及するんだけどな。

図 サブスクリプション・モデルの価値連鎖

図 サブスクリプション・モデルの価値連鎖