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ユニリタ

「カスタマーサクセス支援サービス」の利活用を促進
徹底した「課題のヒアリング」でLTV最大化を図る

ユニリタが提供するカスタマーサクセス・プラットフォーム「Growwwing(グローウィング)」。その活用を支援する同社カスタマーサクセス部門は、顧客の課題を事前に“引き出す”ことを重視している。顧客がソリューションを導入する背景を理解することで、顧客企業にGrowwwingを有効活用してもらう。これが、カスタマーサクセス部門のミッションだ。

尾上雄馬氏
ユニリタ ビジネスイノベーション部 部長代理 尾上雄馬氏

 ユニリタはカスタマーサクセスツール「Growwwing(グローウィング)」をはじめ、数十のクラウドサービスを提供するITベンダーだ。その多くをSaaS形態で提供しており、サービスごとに「カスタマーサクセス部門」を設けている。

 従って、カスタマーサクセスを支援するサービスであるGrowwwingにも、カスタマーサクセス部門が存在する。同サービスは、顧客情報の一元管理、レポートやダッシュボードによるデータの可視化、ヘルススコア表示、Q&A対応管理などの機能を提供している。これにより、VOCの整理や顧客別のカルテ、他部門へのレポート作成、FAQ改善を可能にするという。セールスフォース・ジャパンが提供する基盤上で稼働しており、同社の「Sales Cloud」と容易に連携することもできる。

 Growwwingは、もともとユニリタが提供しているヘルプデスク開発支援ツール「LMIS(エルミス)」のカスタマーサクセス部門が構築、利用していたもので、社内利用開始前には10%だった年次解約率を3%まで減少させ、解約金額も44%減少、工数は45%削減できたという実績がある(図1)。

図1 Growwwing誕生の経緯と実績

図1 Growwwing誕生の経緯と実績

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 同カスタマーサクセス部門を統括するのがユニリタ ビジネスイノベーション部 部長代理の尾上雄馬氏だ。「特徴的なのは、ITソリューションのベストプラクティスで多用されるインシデント管理の手法が採用されている点です。プロセスおよびタスク管理は視認性、管理機能ともに可能な限りわかりやすさを追求しています」と説明する(図2)。

図2 インシデント管理の手法を採用した画面

図2 インシデント管理の手法を採用した画面

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数値より重要視する
顧客の「課題と背景」理解

 同部門の主要なミッションの一つは解約阻止だ。KGIはLTVとNRR(Net Revenue Retention:売上継続率)、KPIは解約金額およびアップセル・クロスセルの金額を設定している。

 だが、尾上氏は「数値で可視化できる結果も重要ですが、最も重要視しているのは、お客様が抱える課題の全体像を把握するために“課題を引き出し、理解すること”です」と話す。

 企業がカスタマーサクセスツールを導入する背景には、営業やサポートが属人的で品質にバラつきがあることや、データの未統合による現場の混乱などが挙げられる。それによってKGIやミッションが達成できないために、ITの力を利用しようとするのだ。尾上氏は、「“とりあえずツールを導入”しても、課題が解決できなければ長期的な継続利用は望めません。導入前の段階から、長期での利用を見込み、お客様の業務上の課題や原因がどこにあるのかを探ることが何より重要です」と、導入企業のカスタマーサクセス実践を支援する際のディスカッションが、同社の売り上げに直結することを強調する。

サクセスの段階を把握する
ITガバナンス「COBIT」

 近年、多くのカスタマーサクセス部門が抱えている課題が「テックタッチ」への移行だ。リソース(人材)不足や属人化という課題を解消するには、欠かせないプロセスといえる。パレートの法則に基づくCRMの考え方には、「上位20%のロイヤルティの高い顧客にはハイタッチ、それ以外はテックタッチ」という手法が根強い。しかし、尾上氏は「テックタッチは本来、すべてのお客様に提供するもの。契約金額のみでセグメント化した顧客対応をする考えは、現段階ではありません」と“ハイタッチ×テックタッチのハイブリッド”の必要性を説明する。

 さらに尾上氏はITガバナンスの成熟度を測るフレームワーク「COBIT」に基づいて“顧客企業のカスタマーサクセスレベル”を捉える取り組みを進める。COBITでは0(存在しない)〜5(最適化)の6段階で、対象となる顧客企業のカスタマーサクセスの段階を客観的に評価・把握することで、根本的な解決策を編みだす。徹底して顧客の視点からの課題を把握する──これをミッションとすることで、長期的なLTV向上を目指す方針だ。

 

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