クレーム対応のレシピ 第36回
顧客の期待値はイメージで決まる
的確な把握で無用な不満を減らそう
著者:JBMコンサルタント 玉本美砂子
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友人から聞いた話である(私のことではない。繰り返すが断じて私のことではない)。
その友人はヘアスタイルもファッションも若作りである。ある日、道を歩いていると、すうっと背後から人が近づく気配を感じたので振り向いたら、若いお兄さんがぱっと顔を見て「なんや、オバハンや」と呟いたそうだ。
「なんやとはなんや。平手打ち3回や」と激怒していたが、モノは考えようで、つまり後ろ姿がステキだったのだ。
後ろ姿を「相手の事前期待」、振り向いた顔を「事後の結果」と考えると、期待と結果の間に大きなギャップが生まれた例だ。
クレームは、事前期待と事後結果のギャップから生まれやすい。
つまり、顧客の企業に対する期待値が、期待値通りもしくはそれを上回る対応があれば顧客満足につながり、逆に期待値を裏切れば不満足やクレームとなる。
言い換えれば、顧客の期待値が高い企業ほどクレームが生まれやすいということになる。
先日、ネットで購入したある電子機器がすぐに故障した。交換を希望してオンラインショップの相談窓口に電話すると、誠に親切な応対だった。
通販会社だから修理・交換には対応できない旨を丁寧に謝罪し、メーカーのお客様相談口の番号を教えてくれた。営業時間のお知らせも付け加えてくれて、私が不便に思っていることへの共感も示してくれた。
ところが、メーカーに電話をすると実に事務的な口調。おまけに故障した機器を宅配便の送料負担で送れと淡々と言う。私が「平手打ち3回や」と腹を立てたのは言うまでもない。
実は、自社製品ではない品物を扱うオンラインショップの応対にはそう期待はしていなかった。
しかし、結果は期待値を上回った。反対に、メーカーには製造元なのだから責任を持って対応してくれることを期待していたが裏切られた。
このメーカーの応対者は、自社に対し顧客が持つイメージを自覚していなかったからクレームを招いたのでないか。
自分の会社に顧客がどういう期待値を持っているのかを自覚することはクレーム応対の基本だ。それを把握したうえで、顧客の期待に沿った応対、あるいは期待値を上回る応対を行うことを心がけねばならない。
先の友人の例に戻ると、彼女は「自分の後ろ姿は魅力的である」という事前期待を自覚したうえで、その期待を上回る自信がなければ振り向かなければよかったのだ。
今は昔のシャンプーのご当地物CMソングに「後ろ姿のすてきなあなた(中略)ふりむかないで。東京の女(ひと)」というフレーズがある。
東京の女ならば振り向かないのだろう。彼女は、あえて振り向いて笑いのネタにしてしまう大阪の女であった。
(コンピューターテレフォニー2014年3月号掲載)
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