クレーム対応のレシピ 第37回
クレーム→離職→品質低下→クレーム
悪循環を断ち切る処方箋は「教育」
著者:JBMコンサルタント 玉本美砂子
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「春眠暁を覚えず」のシーズンがまもなくやってくる。年をとると睡眠時間が短くなるというが、私は十分に若いので(?)、休日はぐっすり長く眠る。
ところが、眠り過ぎるとかえって頭がボーっとなる。
頭がボーっとなるから体を横にする。
体を横にするから眠ってしまう。
眠り過ぎるから頭がボーっとなり、また体を横にする。そうするとまた眠り……もうええ、きりがない。
とりあえず、これを「ネムリスパイラル」と呼ぼう。
何たる怠惰な休日か。この連鎖を断ち切るには、要するに二度寝をしなければいいだけのことだが。
さて、どんなことでも負の連鎖に陥ると、それを断ち切るためには何かに大きな投資や労力をかけなければならない。
大胆な金融緩和を行ってデフレスパイラルを止めようとしたアベノミクスのようなものだ。
コールセンターでも、「応対品質が悪い」→「クレームが発生」→「オペレータのモチベーションが下がる」→「離職が増える」→「新人が入る」→「応対品質が悪くなる」→「クレームが発生」という悪循環に陥っているケースは、けっこう多いと思う。
では、このような状態のセンターが、負の連鎖を切るにはどうしたらいいのだろうか。
まさか顧客に「クレームを言うな」とは言えまい。
下がったモチベーションは簡単には上げられない。
そうすると、「応対品質を上げる」以外に手はない。
つまり、オペレータの応対教育に対し、大胆な投資をすべきなのだ。
デジタル家電に代表されるように現代の商品はたいへん複雑化しているため、複雑なメカニズムの商品を扱うセンターでは業務知識の研修だけで精いっぱいなのが現状だ。
研修にかかるコスト面はともかくとしても時間面が厳しいだろう。
応対に関して細かいマニュアル研修を行う時間がないのならば、せめて次の2点の意識づけをミーティングや連絡事項の告知の際に行ってほしい。
(1)「顧客が何に困っているか」「何に苛立っているのか」「何を解決してほしいと思っているか」に『イマジネーション』を働かせる
(2)「自分がどのような応対を目指すのか」「どんな応対者でありたいか」という『セルフイメージ』を持つ
たとえば、顧客が何を求めているかを理解せず、ひたすら商品知識を話すだけで、これに対し顧客が不愉快な顔をしても平気なうえ、逆ギレまでする応対者がいる。
こうした人に対する教育は最低限必要で、最も難易度の高い教育でもある。
基本的な考え方の差が能力の差になることを教育せよ。
これが、クレームスパイラルに対するアベノミクスならぬ「タマノミクス」と呼ばれる(誰も呼んでないが)処方箋だ。
(コンピューターテレフォニー2014年4月号掲載)
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