クレーム対応のレシピ 第5回
「一応」「たぶん」「ちょっと」
顧客の感情を刺激する口癖に注意!
著者:
JBMコンサルタント 玉本美砂子
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旧知のコールセンターに「一応課長さん」がいる。「一応私が課長の○○です」に始まり、「ここが一応受付になっています」「一応ここが窓になっていて外の景色がよく見えます」「では、一応研修を行いますので~」と連発。こちらも、一応研修をやって、一応帰ろうかと思う。 「接続女史」もいる。「送りましたけど~」「連絡したのですが~」――と、「ました」「しました」と言い切ればいいことでも、いつも文末が接続助詞で終わるから「接続女史」と呼んでいる。実に頼りなく聞こえる話し方だ。
この他にも「たぶん大丈夫です」のたぶん君、「ちょっと調べて~」のちょっとだけよさん、何事にも「できません。やってません」のせんだ君もいる。彼らは、どこのコールセンターにも1人や2人いらっしゃるのではないだろうか。
こうしたあいまい語、否定語はクレーム応対では顧客をよけいに怒らせてしまう言葉となる。クレーム応対ではない普通の応対でもクレームの火種になる。信頼を損ね、反発を招くきっかけとなるのだ。顧客に限らず、人は言葉尻に反応する。たとえば「あなたではこの仕事は難しい」と言われたときと「あなたでもこの仕事は難しい」と言われたときの自尊心の傷つき方はずいぶん違うだろう。一字違いで大違いというものだ。
口癖や無意識で使っている言葉が人の感情を刺激して、本来なら丸く収まることをこじれたクレームに発展させたとしたら、それは顧客にもオペレータにも不幸なことだろう。
言葉の使い方・言葉のニュアンスに鈍感なのは、オペレータの仕事のみならず、どんな仕事の上でも大きなマイナスになるのは言うまでもない。しかし、私たちは言葉の使い方を学校の国語の時間以外に改めて学ぶということは少ない。実用的な会話の言葉となればなおさらである。経験則に任せているのが実情だろう。 だからこそ、ここはひとつ、クレーム応対を題材に『言葉遣いの学習』をしてみてはどうだろうか。どういう言葉が顧客の感情を刺激するのか、どういう言葉が顧客を納得させたのか、ロープレやモニタリングから抽出してみるとよい。そうすれば、言葉遣いのあり方を知っているとクレーム応対がうまくいく、知らないからうまくいかなかったということがわかるようになる。
このことは、経験で気づく前に、意識的に学習することが必要だ。意識して学習し、無意識でも使いこなせるようにトレーニングするのだ。
言葉遣いに自信が出るとクレーム応対がこわくなくなる。クレームで叩かれなくなる。さらにいうと、言葉が変わればオペレータの仕事のみならず人生が変わるといえよう。「一応課長」も「本格課長」に昇格するかもしれない。
(コンピューターテレフォニー2011年8月号掲載)
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