~SVの自分磨き~ロジカルで行こう!第4回
1つの発想にしがみつかない!
原因究明には「柔軟性」がカナメ
センターマネジメントとは、問題把握と改善の繰り返しだ。問題の原因探しに手間取っていては先に進めない。今回は、原因究明の「手法」と「視点」にフォーカスする。代表的な手法「ステアステップ(なぜなぜ法)」や「フィッシュボーンダイヤグラム」を紹介するとともに、陥りがちな落とし穴=思いこみ、を防ぐための考え方やスタンスを解説する。
著者:Y'sラーニング 浮島由美子
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今回のテーマは、「原因究明」です。
世の中で起きることには必ず「原因」があります。問題解決ロードマップにおいても、原因究明は第一のルートです。正しく原因を把握することは、よりよい対策策定の必須条件です。
原因究明におけるポイントは、2つあります。
1.手法の選択:どのような手法で究明すべきか
2.分析の視点:原因に対してどのような分析をすべきか
まず手法の選択ですが、「原因究明には手法が効く」といわれます。原因究明手法はたくさんあります。適切な手法を正しく適用すれば、問題解決のゴールがぐっと近づきます。今回は、異なるシチュエーションを持つ2つの手法をご紹介します。
■2大手法は「なぜなぜ法」「魚の骨」
図1に示しているのが、ステアステップ(なぜなぜ法)です。よく使われる考え方で、トヨタ自動車の「なぜなぜ5回」は有名ですのでご存じの方も多いでしょう。その名の通り「なぜ?」を繰り返し、問題点を深堀りします。例えば、「遅刻」という事象を、「なぜ遅刻したの?→寝坊したから」で終わらせてしまっては、問題点は根本解決しません。この考え方に基づき、「なぜ」を繰り返して、原因を追及するものです。5回は例ですので、いつも5回繰り返す必要はありません。
図1 ステアーステップ(なぜなぜ法)
この手法は、「特定の人・モノ・状況の問題」に有効です。「あれこれ原因は思いつくがどれだろう...?」という仮説を立てる状況にはそぐわないということです。事実は一つです。仮説で進めると間違っていたときに大きなロスタイムが発生しますので、気をつけてください。
また、「なぜ?」「なぜ?」と追っていった最後に「対策領域」が現れるとは限りません。対策できることは「なぜ」の階段の途中で発見できることもあります。
代表的なもう1つの手法が、フィッシュボーンダイヤグラム(特性要因図)です。「魚の骨」という呼称もご存じの方は多いでしょう。品質管理の七つ道具と呼ばれ、なじみやすい方法です。こちらは「仮説」の検討に使用されます。つまり、原因がいろいろ考えられる、複数の原因が交錯していて整理しきれない、というケースにおいて原因を絞り込むための手法です。数多くの原因が見い出された場合、もぐらたたきのように全てに対策することは得策ではありません。フィッシュボーンに書き表して整理し、優先順位をつけましょう。これは、そのためのシートです。
図2では、対策シートもフィッシュボーンで示しました。絞り込んでいる様子がおわかりいただけるでしょうか。優先順位は通常「重要度」と「緊急性」を勘案して決定します。しかし、フィッシュボーンで多くのアイディアを挙げてみると、もうひとつ「対策しやすい」という領域が見えてきます。「重要度」や「緊急性」が高くなくても、「簡単ですぐにできることならやってみよう」といった原因つぶしに対する柔軟性も大切です。
図2 フィッシュボーンダイヤグラム(特性要因図)
本来、フィッシュボーンは「たくさんの発想を得る」ための手法です。柔軟にいろいろ考えてみましょう。
■STOP& THINKを心がけよ
次に分析の視点についてです。原因究明では、原因をどのように導き出すか、原因に対してどのような分析をすべきか、という側面も重要です。どんなに良い手法を使用しても、「原因が思い当たらない」「違う原因を想定してしまった」「対策領域の判断を間違えた」というのでは、話になりません。
私たちは、何か起きたとき、常に「なぜ?」という疑問を抱きます。なにげない内容であろうとも、原因がわかってもしかたのないことでも、私たちは原因を求めます。これを、「原因帰属」と呼びます。原因帰属には、内的帰属と外的帰属があります。
「帰属」は心理的な要素が大きいため、「誤り」が発生します。いわゆる「思い込み」や「先入観」、場合によっては、「上司の命令には逆らえない」といった困った帰属もあります。私たちは、結果が良いときは自分たちの努力の結果だと考え、悪かった場合には「問題が難しかった」「運が悪かった」「顧客が感情的だった」などと考えがちです。
心理的要素は、ときとして正しい原因究明を阻害すると心得て、客観的に判断することを心がけましょう。ロジカルシンキングには有効な「手法」や「考え方」がたくさんあります。それを活かすためには「STOP& THINK」が大切です。「何か思いこみはないかな」「本当に原因はこれだけかな」とポイントポイントで立ち止まって考えてみてください。
図3 原因究明技法の適切な選定基準
(コンピューターテレフォニー2012年7月号掲載)
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