デキるリーダーであるべきか
リーダーになりたがらないオペレータを、「向上心がないから」と断じるのは早計だ。
リーダー候補とされる人材を対象にした研修で、参加者に「リーダーになりたいか?」と問いかけてみたことがある。
多くは、「本音を言えば、ならないで済むならなりたくない」と口を揃えた。
理由を聞いてみると、以下のようなものが多かった。
・収入や福利厚生が格段に良くなるわけでもないから
・業務量や責任が増すだけで、面倒臭いから
・現場の仕事が好きで、ずっと自分の好きな仕事をしていたいから
・会社や職場に縛られたくないから
・現リーダーを見ていて、「ああはなりたくない」と思うから
ありありと伝わってきたのは、「リーダーは総じて『損な役回り』である」というマイナスのイメージだ。
リーダーの働き方について聞くと、「いつもガンガン指示を出している」「上司の期待に絶対に応えている」「何を聞いても全部回答してくれ、なんでも知っている」「メンバーに弱みを見せない」「常に業務、数値、人の管理を効率よくすることばかり考えている」などの声があった。
「さまざまな案件をバリバリとこなしていく、“デキるリーダー”」と現リーダーを評価する一方で、「それほどインセンティブがあるわけではないのに、ここまでやらないといけないのは損だ」と結論づけているのだ。
そもそも、リーダーは絶対に“デキるリーダー”でなければならないのか。
「チームが共通の目的を達成するために、メンバーのパフォーマンスを最大限に発揮できるような場をつくる存在」であってもいいのではないか。
数多のリーダーシップ関連書籍を見ると、「べき論」で溢れている。
「リーダーはこうあるべき」と思い込んでいることが、「なるのは損だ」につながっているのではないか。
次世代リーダーの育成は、理想のリーダー像をいったん手放すところから始めてほしい。
著者:つくる考房 井口大輔
この著者の講座は「チームビルディングとモチベーション・コントロール~現場の“やる気”を引き出す技術」「リーダーシップ研修~理論と実践で学ぶ組織行動学」です。