クレーム対応のレシピ 第30回
BtoBのクレームは傷が深い?!
長い付き合いだからこそ甘えずに
著者:JBMコンサルタント 玉本美砂子
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BtoB(Business to Business)やBtoC(Business to CustomerまたはComsumer)という言葉は元々テレマーケティング業界の用語であったと思うが、今では一般的に使われる言葉になった。
念のため説明しておくと、BtoBは法人(事業者)間の商取引で成り立つビジネス形態で、メーカーと小売店などが典型だ。
一方、BtoCは、直接エンドユーザーと繋がるビジネス。
小売店と一般顧客などがこれにあたる。
以前、応対調査をしたところ、一般的に電話応対/接客応対の丁寧さという点ではBtoC企業が優れている。
BtoB企業は、言葉遣いや接客態度を軽んじているところが少なくない。
クレームが起きても「すいません」と日頃の関係の延線上での対応をしてしまっているところすらある。
当然といえば当然で、BtoCの場合、世の中の人のすべてが顧客となりえて、誰が電話をかけてきたり来店したりするかわからない。
取り引き先が特定されているBtoBとは、接客のあり方が異なる。
では、クレームの場合はどうだろうか?クレームに軽重はないが、BtoCは顧客との関係性が1回きりということも多く、クレームも「大勢の顧客の中の1人(顕在的には)のもの」と割り切ることができる。
仮にその顧客を失ったとしても「他の顧客で挽回しよう」という考え方も成り立つ。
対してBtoBは、その顧客と継続的な関係性や売り上げが発生していることが多い。
クレームから得意先を失うと大きなダメージを会社が負うこともある。
今までの関係性があるので無茶なクレームがくることは少ないが、ひとたびクレームとなるとケガは大きい。
BtoBのクレーム応対は実は難しいのである。
筆者の会社はBtoBがメインだ。
大きなクレームがクライアントから来たことが1度あり、先方にアポを取らず(アポを取ると会ってもらえないので)押しかけて真剣に謝罪した。
取り引きは回復できなかったが、きちんと出向いて謝罪をした結果、「あなたの態度は評価できる」とのメールまでいただいた。
断っておくが、取り引きを回復させたいから謝罪に行ったのではない。
だから、「もう一度チャンスをくれ」とは言わなかった。
人として謝罪しなければならないと思ったから謝罪に出かけたのだ。少なくともこの気持ちは伝わったのだろう。
期待はしないが、今後、何らかの関係で先方の会社とお付き合いすることがあったとき、少なくともいきなり嫌な顔はされないと思う。
BtoBビジネスというのは、「関係性のビジネス」である。
クレームを言う側もクレームを受ける側も前後左右の関係性と継続性を十分に考えて対応しなければならない。よく瞬間湯沸器のように怒る人や怒り返す人がいるが、その先がどのようになるかに創造力がおよんでいるのだろうか。
短慮は浅慮、短期は損気なのである。
クレームは言う側も受ける側も四方八方とその先を見渡さねばならないのだ。
(コンピューターテレフォニー2013年9月号掲載)
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