クレーム対応のレシピ 第31回
責任を取らない、気分次第の避難
愛想を尽かされるセンター長の振る舞い
著者:JBMコンサルタント 玉本美砂子
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サザンオールスターズが5年ぶりに活動を再開した。大ファンなのでさっそく友人を誘ってコンサートに駆けつけた。
「いい年をして!」と言われるかもしれないから断っておくが、マヒナスターズではない。
さざんかの宿でもない。あのサザンなのだ。
「桑田佳祐、最高!」である。
最近の大型コンサートは、入場の際にチケットの発行時のIDと免許証などで本人確認をする。
不審者を紛れ込ませないためのセキュリティなのだろうが、文明の利器にも弱点がある。
その日もID管理システムがおかしくなったらしく、結局1時間近く開場が遅れてしまった。
もちろん開始も遅れ、ようやくオープニングの曲が流れたと思った直後、桑田氏がこう言った。
「今日は僕のせいで待たせて本当にごめんなさい」と。
「桑田が言うのなら仕方がない」――この瞬間、その場にいたファンの気持ちはこうだったと思う。
カリスマ的芸能人だからといってしまえばそれまでだが、“どんなことがあってもすべての責任は自分にある”という姿勢には好感が持てた。
翻るに、コンタクトセンターでクレームがこじれたとき、「どんなことでも責任は自分にある」といい切れるセンター長やマネージャーはどれくらいいるだろうか。
「君の言い方が悪い」「エスカレーションが遅い」などと管理者がコミュニケータ(オペレータ)に責任を押しつけてばかりしてはいまいか。
コミュニケータはコミュニケータで、「スクリプト通りに話しているのだからマネージャーが悪いんじゃないの」と不満を持っていたりする。
誰が悪いわけではなく、センターの仕組み自体に問題があるケースも少なくない。
その改善をなさずに、責任のなすりあいをしても始まるまい。
もちろん、仕組みに着眼して改善に取り組むのは管理職の役割だ。
考えうる限りのクレームや応対の想定を行いつつ、危機管理マネジメントを行わなければならない。
よりよい仕組み作りはマネジメントの要諦であり、マネージャー、リーダーの職務だといえる。
コールセンターは、チームでクレームの解決を図るようにすべきであり、誰か特定のコミュニケーターに責任を負わせればいいというものではない。
これは言い換えると、責任の所在はトップや管理職にあるということになる。
「部下の手柄は上司のもの、上司の失敗は部下の責任」――テレビで活躍の半沢直樹の名言である。
顧客の方を向かずに内向きの責任追及をしてばかりでは、しまいに顧客にもそっぽを向かれるだろう。
さらに、コミュニケーターからすれば「気分次第で責めないで♪♪涙が出ちゃう」となってしまうのがオチである。
(コンピューターテレフォニー2013年10月号掲載)
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