毎日できるメンタル・ケア 第1回
あいさつは“心の栄養”
著者:きゃりあす 奥 富美子
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「先月辞めた派遣さんがね」
「どこに座ってた派遣さん? 」
「○×チームの人。△△から通ってた派遣さん。通勤に一時間半もかかって大変だったみたい」
この『派遣さん』に、名前はなかったのでしょうか。名前がないはずありません。
おそらく名前を覚えることをしなかった正社員の人たちなのでしょう。この会話の人たちからすると、センターにたくさんいる派遣さんの1人は、「1人」という「数」でしかなく、「○○さん」という固有の人ではないのかもしれません。
管理者の方は、自チームのコミュニケータの1人ひとりに「○○さん」と声をかけているか思い出してみてください。用事のあるときだけ「○○さん」と呼んでいますか。
注意するときだけ「○○さん」と呼んでいますか。それとも、「おはようございます。○○さん」「○○さん、お疲れ様です」と挨拶に名前を添えていますか。
用事はなくても、とにかく声かけをしていますか。
「○○さん、調子どう?」
「○○さん、今日は電話多いね」
「○○さん、さっきのお客様大変だった? 」
これらは、『プラスのストローク』です。プラスのストロークは相手の存在を認める働きかけです。私たちはストロークを渡したり受け取ったりしています。渡すことも受け取ることもどちらも大切です。
ストロークは、言葉であったり、表情や態度であったりします。できれば、気持ちの良いプラスのストロークのやり取りをしたいものです。
ある企業で30歳くらいのビジネスマンに、「会社を辞めたくなるほどの上司のふるまいは何か」というアンケートを取ったら、第一位は「挨拶をしない」であったという記事を読んだことがあります。私たちは、「挨拶をしたら、挨拶を返してほしい」のです。挨拶の返事がないのは、「私の存在、分かってないの?」と感じてしまうのです。
プラスのストロークがほしい。つまり、「私の存在を認めてほしい」ということです。
混雑するエレベータが到着階に着くと、同じフロアで仕事をする管理職が降りていきました。
後から降りた私は、直属の上司ではありませんがその人の背中に向けて「おはようございます」と声をかけました。
この階で降りたのはその人と私の2人だけです。その人は後ろを振り向き、私の顔を見て目を合わせましたが、そのまま前を向きだまって部屋に入っていきました。
私の存在はないものとされました。
私は、相手を否定して認めないというマイナスのストロークを受け取りました。
目と目があったらニコッとする。「~してくれてありがとう」とお礼を言う。
「○○さん」と声をかける。「長い電話、お疲れさま」と付箋に書いて渡す。
こうしたプラスのストロークのやりとりをしていきましょう。
働く人々の心の栄養になります。センター運営の潤滑油になります。
センターの1人ひとりが大切なメンバーです。「1人という数」ではなく、「○○さん」という存在なのです。
(コンピューターテレフォニー2013年12月号掲載)
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