毎日できるメンタル・ケア 第2回
「否定への恐れ」をほぐそう
著者:きゃりあす 奥 富美子
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今回は、“人との関わり力”を養成するメソッド、『ドラマケーション』を紹介します。
「何を言っても何をしても自分を認めてもらえる。否定されない」場を作ることがポイントで、「評価的要素を一切入れない」ことが重要です。
メニューのひとつに、「おしゃべり仲間」というものがあります。4人が前に出て、全員が「何か」になりきっておしゃべりをするのです。
他の参加者はそのおしゃべりを聴きます。たとえば「椅子」というテーマでは、4人が「椅子」になりきり「椅子仲間」としておしゃべりをします。
「今朝ね、とっても重たい人が座って大変だったの」「そうなんだぁ。私は、もっと人が座ってほしいと思ってる。だって私、倉庫で静かにしているから誰もたずねてこないんだもの。さみしいんだ。自分の役割ってなんだろうと思っちゃう」「あなたどう?できたばかりの椅子でしょ。どこで暮らすの? 」――とこんな調子です。
1分程度のおしゃべりをしたところで、1人がグループから抜け新しい1人を迎え入れます。抜けた1人は、なりきる「何か」を提示します。新たな4人組で、新たなテーマになりきっておしゃべりします。これを参加者全員が体験できるまで繰り返します。
このとき、「なりきる」ことができない人がいます。理由は、イメージ力の不足と否定への恐れの2つです。
「なりきった自分」のイメージがつかず、テーマを提示する時点で、「エ~ッ、どうしよう。何すればいいの~」と長いことつぶやき、誰かの力を借りてその場をしのごうとします。他の3人がおしゃべりを始めても、「エ~ッ、分かんない~」とつぶやき、おしゃべりに加わることなく終わります。
こういうタイプの人は、顧客対応でも苦労することが少なくありません。「お客さまは今どんな状態にあるんだろう。なぜそうしたんだろう」ということがイメージできず、顧客に寄り添えないからです。
また、なりきった自分を否定されることを恐れることでなりきれない場合もあります。
こういう人は、普段の業務でも「間違ったら怒られる」と上司の目を気にし、「正しくしなければならない」「決して変な言葉遣いをしてはいけない」と自分への意識が行き過ぎて、過度に緊張しています。
顧客の話をきちんと聴けず、事務的で体温がないような言い方をしてしまいちょっとしたことで応対クレームを起こしやすくなります。
クレームを体験した恐怖から、ますます柔軟性が失われていきます。
こうした応対下手は、本人が苦しんでいることもあります。緊張を解いてあげることで、「正しい回答」と「感じのよい言い方」の両立を促せます。
「何をいっても受け止めてもらえる体験」は、一見すると応対とは直結しないように見えますが、「失敗しても恥ずかしくない。なんとかなりそう」という気持ちを育てることに役立ちます。
(コンピューターテレフォニー2014年1月号掲載)
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