富士通研究所、AIでコンタクトセンターの〝応対トラブル”を検知する技術を開発

 富士通研究所は、コンタクトセンターにおける顧客とオペレータの会話をAIにより分析することで、通話中の応対トラブルの発生を9割以上の精度で検知する技術を開発した。

 コンタクトセンターにおける応対トラブルは、オペレータのES低下のみならず、通話時間が通常より長くなることにより、他の顧客のオペレータ接続待ち時間が長くなるなど、生産性低下の大きな要因となる。待ち時間は顧客の不満に直結するため、通話時間の平準化はCS向上の視点でも大きな課題だ。

 最近は顧客とオペレータの会話をリアルタイムに音声認識し、テキスト化された情報に基づいてアラートを自動化する取り組みが進んでいるが、会話における同時発声、言い澱み、文法から外れた発声などが含まれる会話の認識は困難だった。今回開発した技術ではその欠点をカバー、トラブル発生を高精度で検知する。

 技術開発には、富士通のAI技術「FUJITSU Human Centric AI Zinrai」を用いた。その特徴は下記の通りだ。

(1)応対トラブル発生の確度をスコア化
 トラブルが発生した際の会話で多くなる傾向にある、「~ではなく」「分からない」などの否定的なキーワードを検出用のリストとして活用する。さらに今回、「sou」や「naku」などの発声言語の最小単位である音素の並びの傾向を認識することで、顧客とオペレータの同時発声時や言い澱みなどで一部のキーワードが認識できない場合や、「そうではなく」「そうじゃなく」といった多様な言い回しがある場合でもトラブル発生を検出できる。

(2)トラブル時の会話の特徴の時間変化パターンと算出したスコアの軌跡を比べることで高精度な検知を実現
 トラブルが発生した際の会話では、トラブル時の会話の特徴が通話の冒頭から顕在化する傾向や、全体の会話の中でもその特徴が多くを占める傾向にあるなど、特有の時間変化パターンがあることが分かった。そこで、算出した応対トラブル発声の確からしさのスコアの軌跡が、これらの時間変化のパターンと近いかどうかでトラブルの有無を判定する技術を開発した(特許出願中)。これにより、スコアだけではある程度の長さの通話から算出しないと検知できない中、パターンと照合することで通話開始から短時間しか経過していなくても、応対トラブルの発声を高精度に検知することが可能になる。


 実際のコンタクトセンターの会話データ(442通話分)を用いた評価実験において、通話中のトラブル発生に対して約9割以上と高精度に検知できることを確認。これをオペレータの稼働率が高いコンタクトセンターに適用した場合を試算すると、顧客の待ち時間を平均2割短縮でき、顧客満足度向上への貢献も期待できそうだ。